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睡眠の基本と改善の仕方

2024.05.15

睡眠科学の第1人者のマシュー・ウォーカー教授とHuberman Labのヒューバーマン教授が睡眠についてのディスカッションを6週間にわたってポッドキャストで話していたので、そこで紹介されている睡眠の基本的な概念と、質の良い睡眠を確保するための実践的なヒントを日本語で要約しました。

睡眠の基本(QQRT)

QQRTはQuantity(量)、Quality(質)、Regularity(規則性)、Timing(タイミング)のことで、これら4つの要素を使って睡眠の質を判断します。

Q(Quantity) - 量

睡眠時間の総量です。一般的な成人では7~9時間の睡眠が必要とされます。これにより、深い睡眠とレム睡眠の両方に十分な時間が確保され、リフレッシュされた気分で目覚められます。個人差があり、赤ちゃんや十代の人、病気や感染症と戦うときにはもっと多く必要です。

Q(Quality) - 質

睡眠の連続性と構造です。よく目が覚める(覚えていなくても)、睡眠が断片的である場合は質が悪いと言えます。 ウェアラブル睡眠トラッカーは睡眠効率のスコアで質を測定します。85%以上が目標です。 注:睡眠トラッカーを使うと、睡眠の質を気にしすぎて逆に睡眠を乱す"オルソムニア"になる人もいます。毎日ではなく、例えば週に1回程度にスコアを確認する頻度を下げるとよいでしょう。 睡眠トラッカーを使わない人は、十分な時間睡眠をとれていても昼間の眠気が強ければ、睡眠の質が悪いサインです。

R(Regularity) - 規則性

睡眠スケジュールを一定に保つことです。就寝時間と起床時間を毎日一定にすることで、体内時計である概日リズムが安定し、全体的な睡眠パターンと質が改善します。 可能な限り週末も平日も±30分の誤差内で就寝・起床時間を一定にすることが目標です。 朝の目覚まし時計に加えて、"就寝時刻のアラーム"を設定するのも良い方法です。 研究では、規則正しい睡眠リズムは全原因死亡率を下げ、がんや心血管疾患のリスクも睡眠時間よりも効果的に低減することが示されています。

T(Timing) - タイミング

自分のクロノタイプ(朝型人間か夜型人間か典型的な睡眠・覚醒パターン)に合わせた就寝時間を心がけることです。クロノタイプは主に遺伝的に決まりますが、人生の節目で多少変化します。MEQ(朝夕活動リズムテスト)で自身のクロノタイプがわかります。クロノタイプに合わない睡眠スケジュールだと質の良い睡眠が得られません。ただし、生活の要求にも合わせる必要があります。

睡眠の質を自己評価する方法

目覚めた時にリフレッシュされた気分がするか、もっと寝ていたいと感じるか。後者の人は、今から話す睡眠衛生の実践ヒントが役立つでしょう。これらを実践することで睡眠の質が大幅に改善し、ひいては日中の活動と健康状態が良くなります。

睡眠衛生の基本

睡眠衛生の基本その1:光と暗闇

メラトニンは眠気を誘発するホルモンで、その他の役割もあります。暗闇ではメラトニンが分泌され睡眠が誘発されます。一方、夜の強い光、特に青い光はメラトニンの分泌を抑制するため、眠気が来ず質の悪い睡眠になります。

夕方は家の中の照明を落とし、身体に眠りの合図を送ります。天井灯よりも低い位置の照明を使い、黄色や赤色の光源を使うと刺激が少なくなります。

夜間はスクリーン時間を控えめにし、使う場合は大幅に輝度を下げましょう。また、多くのOSには夜間モードがあり、時間に合わせて自動的に暖色に調整できます。

寝室は遮光カーテンやアイマスクで完全に暗くすることをおすすめします。

朝は10-15分の日光浴をしましょう。朝日は睡眠を抑えるメラトニンの分泌を止め、体内時計のリズムをリセットします。また、日中のアクティビティに必要なコルチゾールの分泌も促します。曇り空でも光(フォトン)は十分に届くので、直接太陽を見る必要はありません。

地理的理由や生活スタイルで朝日が浴びられない場合は、SAD(季節性情動障害)用の光療法機器が代替手段となります。ただし、自然光ほど効果は高くありません。

睡眠衛生の基本その2:温度

体温調節は睡眠に大きな影響を与えます。睡眠に入るには、体幹部の体温が約1°C低下する必要があります。 寝室の温度を約19°Cに保つか、温度調節できる寝具を使いましょう。 手足を布団から出すと体を冷やせます。 就寝前にお風呂に入ったり、温かいシャワーを浴びることは、科学的根拠のある睡眠改善法です。最初は体温が上がりますが、その後の体温低下が睡眠を促します。

睡眠衛生の基本その3:食事とタイミング

食事が睡眠に与える影響は、食欲、体内時計のリズム、個人的な嗜好によって異なります。様々な食事と時間を試して、自分に合うものを見つけましょう。 就寝の約2時間前なら睡眠に大きな影響はありませんが、それより就寝に近い時間に食べると、一部の人では胃食道逆流(胸やけ)の原因となり睡眠を阻害する可能性があります。とはいえ、空腹のままでは眠れない人も多いでしょう。その場合は消化にいい炭水化物(うどんやおかゆなど)を少し食べるくらいなら大丈夫です。

ただし就寝直前の過剰な水分補給は、夜間頻尿の原因になるので避けましょう。 朝は起き抜けからたくさん水を飲んで、夜にかけて徐々に飲む水の量とスピードを落としていき、寝る前は喉が渇かないよう少量をゆっくり飲むようにすれば水分不足を回避しつつ夜にトイレのために起きる回数が減ります。

睡眠衛生の基本その4:カフェイン

カフェインは睡眠の必要性を減らすわけではなく、一時的に眠気をごまかすだけです。カフェインが切れると、眠気物質であるアデノシンの蓄積により"カフェインの落ち込み"が午後早くに起こります。

カフェインの摂取タイミングが睡眠の質に大きな影響を与えます。 カフェインを半分分解するのには6時間かかります。よって、昼過ぎ以降のコーヒーは避け、朝食後の数時間以内に摂るのがベストです。

注:一部の人は夕方や夕方以降にカフェインを摂取しても睡眠にあまり影響がない人もいます。これは個人差や、カフェイン代謝能力の違いによるものと考えられます。また、入眠するのに問題がなくても、睡眠の質が低下することに気づいていないケースもあります。自分に合うやり方を見つけるのが賢明ですが、カフェインは睡眠構造やレム睡眠時間に悪影響を及ぼす可能性があることは認識しておく必要があります。

睡眠衛生の基本その5:Wind-Down Routine(落ち着きルーティン)

車が完全に停止する前に少しずつ減速するように、睡眠に入る前に、日中の活動から徐々にスローダウンさせることが大切です。睡眠に向けて心身を準備する落ち着きルーティンを確立しましょう。

  • 瞑想、音楽鑑賞、ポッドキャストやオーディオブック、読書などのリラックスできる活動を行う。
  • テレビ視聴、ニュース視聴、激しい運動、SNSなどの興奮する活動は避ける。

注:リラックスといっても、アルコールには注意。アルコールは睡眠導入剤ではなく、鎮静剤です。就寝前に飲めば確かに入眠はしやすくなりますが、アルコールは自然な睡眠構造を乱すため必要な睡眠のそれぞれのフェーズが妨げられ、質が大きく下がります。また、断片的な睡眠になりがちです。

なかなか眠りにつけない時は?

ウォーキング: 20-25分以上入眠できない場合は、別の部屋に移動して落ち着いた活動をするといいでしょう。ベッドで起きている状態を作らないことで、ベッドと覚醒状態を結びつけないよう意識します。本当に眠気を感じたらベッドに戻りますが、他の場所で眠ってしまわないよう気をつけます。

何もしない: よく眠れなかった日は、次の日とくにいつもと違うことをしないのが重要です。 よくある間違いは起きる時間を遅らせたり、いつもより早い時間に寝たり、カフェイン摂取を増やしたり、長時間もしくは夕方以降の昼寝をしたりすることです。 これをしてしまうと体内時計のリズムを乱し、睡眠・覚醒サイクルに悪影響を及ぼす可能性があります。

メンタルウォーク: 入眠が難しい時は、頭の中で馴染みのルートを歩くイメージトレーニングをするとよいでしょう。この手法は、ひとつひとつの考えを追うのではなく、注意を別の対象に向けることで思考を静めるのに役立ちます。研究によると、この方法で入眠までの時間が大幅に短縮されたことが示されています。

昼寝は控えめに: 昼寝は20-30分以内に抑え、遅くとも午後の早い時間までにしましょう。それ以上長く眠ると夜の睡眠に影響する可能性があります。

これらの対策を試しても改善がみられない場合は、睡眠時無呼吸症候群や不眠症など、何らかの睡眠障害の可能性があります。そのような場合は専門家に相談することをおすすめします。